Jリーグ Division2 2005シーズン

  第8節 サガン鳥栖 0 - 2 モンテディオ山形

2005/4/26

個人的な話だが、この日は鳥栖スタジアムで初めて会う方もいらっしゃってご挨拶をすることができたので非常によかった。京都戦を出張で欠席したので久しぶりにホームで見ることができた山形戦。この試合に勝てば一気に上位進出のきっかけもつかめるだけに意気揚々として鳥栖スタジアムに出かけたのだが、監督も言っていたように選手もサポも仙台戦の勝利を過信しすぎたかのように山形の組織力に屈してしまった。

◆ 攪乱されたディフェンスライン

試合開始当初からお互いにシュートチャンスがあった中、最初の決定的チャンスは山形に訪れた。ロングボールの競り合いからのこぼれ球を拾った本橋から組み立てチッコがミドルシュート。鳥栖ディフェンス陣が防いだもののそれを拾った佐々木がまたミドルシュート。さらにそのこぼれ球をひろった臼井のクロスがあがるシーンである。

臼井のクロスボール

臼井のマークについていた公平と義希は省略する。ゴール前では図のようなポジション取りが行われていた。鳥栖はディフェンスの意識が強かったのか、最終ラインに左から公平、義希、八田、加藤(チッコをマーク)、奈良崎、長谷川(原をマーク)という6人がラインのような形で並んでいた。明らかに攻撃側の選手よりもディフェンスラインの選手はそろっているのである。しかしながら中央の高橋をフリーにしてしまって臼井のクロスからの決定的なシュートを放たれてしまった。守備側の選手が多かった故に、逆にマークに対する意識がそれぞれでぼやけてしまったと言えるだろう。また、井手口がいればコーチングの面でかなり貢献しているが今回のセンターバックは加藤、八田と比較的声のでない選手の2人であった。その辺が影響している面もあったかもしれない。

失点のシーン

失点は先ほどのシーンより3分後。同じ様な形で今度は浅い位置から臼井のクロスを原に決められた場面である。クロスがあがるときのポジションは上図の通りである。山形の原と奈良崎のみがペナルティエリア内にいる格好になっており、この時点でオフサイドという選択肢を失っていた。ボールが左サイドにあり、奈良崎からはセンターバックの位置取りは見えていたはずなのでラインがきれいにそろえきれなかったのはやや残念なポジショニングであった。クロスボールが上がるときにファーサイドをケアしようとして下がったところへ奈良崎の前方のスペースへ絶妙のクロスボール。原がそれをいち早く感じて前にはいりこみフリーでシュート。防げる失点だっただけに非常に悔いが残る先制点であった。

その後も一進一退の攻防が続く。山形は1点を取った余裕からかボールを取っても時間をかけてボールを回す。鳥栖は鈴木師匠、宮原と惜しいシュートが続くものの得点を取ることができない。どうしても1点が欲しいのでボールを前へ前へという展開が続いていた。いない選手の事を言うのはタブーではあるが、この試合では落合というボールを落ち着かせることのできる選手が中盤の底にいたら展開がかわっていたかもしれない。

そんな中、いつものセンターバックではなかったというのが影響したか分からないがシュナと加藤の連携ミスからピンチを生み出すことになる。その辺りからどうもちぐはぐなディフェンスが続いていた。そして右サイドからこの試合2本目の佐々木からのいいクロスがあがって大塚のミドルシュートによる失点をしてしまった。試合巧者の山形に2点を先制された時点で試合は非常に難しいものとなった。

筆者的には前半は佐々木個人という選手については、これまでの他チームの対応と比べると思ったよりはある程度抑えることができていたと思う。しかしながら臼井とのコンビネーションを止めることができなかった。臼井は鳥栖のディフェンスが詰めてもクロスボールを配球していたし、佐々木があけたスペースを上手につかってゴールライン近くまで切り込んでいた。山形右サイドの組織的な攻撃というものに屈してしまった感がある。後半は3バックにして佐々木にスペースを与えてしまってからはJ1選手並の活躍をされてしまったのは言うまでもないだろう。佐々木がすごいところは一度ボールを失ってもそのルーズボールを鋭い出だしで自分で拾ってしまうところ。一歩目の速さに関してはJ2でも1、2位を争うのではないか。

◆ 混乱してしまったシステム

後半に入って山道を竹村に変えて3バックによる攻撃を試した鳥栖。しかしながらこのシステム変更がシステムの混乱を生み出してしまった。戦術によるベースがないために効果的な走り込みができない、スペースがないためにパスの出所がない、しょうがなくバックラインまでボールが戻ってしまう、という形が何度も続いてしまった。ポジショニングに関してはベンチからも盛んに指示が出ていた。義希のポジショニング、飯尾の上がり方、相手セットプレイ時の時に前線ではる選手の通達、あらゆる場面で岸野コーチ、松本監督が指示を出していた。しかしながら後半40分過ぎに竹村からベンチに向かって再度確認の質問が飛ぶ。

 
 竹村 「監督!後ろは3枚でいいんですよね?!」
 

指示を受けて改めて確認の意味もあっただろうが、40分過ぎでこの確認が必要ということはよっぽど攻撃がうまく行ってなかったのだろう。開幕から自分たちのベースで戦って来た4バックをこの日初めて崩すことになったが今回は決してうまく行かなかったと思う。ボールに対するフォローの絶対数の少なさを見ればそれは明らかだと思う。小石が右サイド突破に掛かるときのフォロ−、大実がポストで受けた時のフォロー、新居がサイドに開いてボールを受けたときのフォロー、いずれもフォローが遅れ山形のプレスに屈してしまっていた。戦術的なベースがないのでフォローへのアイデアがなかなか生まれてこない。

監督としても負けている時のシミュレーションはしていただろうが、ここまで4バックが戦術的に機能してなくてシステムそのものを変更しなければならないような事態は想定していなかったのではないか。ただ、実戦の中で3バックというものを試すことができたのはオプションとしてきっと今後の糧となるはずだ。

戦術的に動けない鳥栖に対して山形は非常に戦術的に守ることができていた。鳥栖からロングボールがでるときに、鈴木師匠がサイドによった時には上背のある小林がそのマークにつき、内山がポジションチェンジをして小林の空けた中にしぼって守る。ボランチの大塚、本橋が盛んに上下運動を繰り返してボールサイドとのバランスを取りながらスペースを埋める動きを行う。また、鳥栖には中央に強力な選手がいないためにサイドのスペースを埋めるべく山形両サイドの選手はややワイドに構えていた。そのように瞬時の判断ができる山形ディフェンス陣を崩すことは決して容易ではなかった。非常に悔しながら2点を与えた時点で試合は終わっていていたのかもしれない。

もうひとつ、この試合で感じたことはひとつひとつのパスの精度の違い。特にクロスの精度の違いはかなり顕著であった。浅いところ、深いところに関わらずクロスそのものの数に関しては鳥栖も山形もそう変わらない数値を記録しているはずだ。しかしながら成功率はまったく違うだろう。鳥栖のクロスは直接ゴールラインを割ったり、キーパーに取られたり、ディフェンスにブロックされたりと精度を欠くものが多かったが、山形のクロスは臼井、佐々木に代表されるようにクロスの質が非常によく何度もチャンスを産みだしていた。これから得点力をあげるためにはこのクロスの精度を上げることとクロスがあがったときにゴール前にしっかりとポジショニングを取ることが非常に重要である。

最後に、精神論というのはあまり好きではないが、筆者がサガン鳥栖の好きなところは最後まで諦めずに走り続けること。古い話になるが北内耕成という選手が非常に好きで空回りしながらもボールを追う姿に、試合は負けていても胸が熱くなったものだ。話は戻るがこの試合は大実が入ったときに大実のプレーに気持ちがこもっているなと感じた人が多かったのではないか。それだけ他の選手の動きに精彩がかけていたような気がする。筆者的にも何となく試合が始まり、何となく点数がとられて、後半はなんとなく試合が終わってしまっていた。次こそは熱い、熱いプレー、そして試合的に勝利して熱狂できるホームゲームを期待する。