Jリーグ Division2 2005シーズン

  第13節 サガン鳥栖 1 - 0 ベガルタ仙台

2005/5/28

ホームでの勝利はこんなに盛り上がるものなのか。ベガルタ仙台に勝利した瞬間の鳥栖スタジアムはまさに祭り状態。メイン、バック、そしてゴール裏、スタジアムのいたるところから歓声と歓喜の声が響き渡り、選手達もそれに応えて勝利のでんぐり返しを3回も披露した。観客も8000人を超える入場者数を記録し、地元の盛り上がりをひしひしと肌に感じる。

終了後スタジアムの外で出待ちをしていて選手達が帰っても駐車場で余韻に浸っていたら松本監督がいらっしゃった。2位ですねということを言うとこういったコメントが帰ってきた。

 
 松本監督 「いやあ、瞬間的なものですからねぇ。この時期でまだいちいちそんなに喜んではいられませんよ。しかし、えー、チームの歴史としては2位は初めてなんでしょ?まぁ、それを考えるといい事なのではないですかね。」
 

サガン鳥栖のチームの歴史…

決して順風満帆と言えなかったが紆余曲折を経てようやく光が見えてきたサガン鳥栖。今期の戦いがこれからも楽しみである。

◆ ポイントはサイドチェンジ

サイド分割表

言うまでもなくこの試合のポイントはサイドチェンジだろう。松本監督のハーフタイムコメント、そして試合終了後の記者会見、または岸野コーチのコメントにもあるように、仙台の守備としてはプレスをかけてサイドに追いやって奪うという守備体系なので追いこまれる前にサイドを変えて守備を混乱させて崩すというものであった。

さて、そのポイントに上げられたサイドチェンジはこの試合で本当に多かったのだろうか?実際にサイドチェンジの数を数えてみることにした。図のようにピッチを縦に4分割して間を1区間以上飛ばされたパス(例えば1のゾーン→3ゾーンへのパス)をサイドチェンジとみなした。また、ゴール前のクロスボールは除外している。得点前にクロスが流れてファーサイドの義希が拾ったようなボールはサイドチェンジとは数えていない。あくまで組み立ての中でのパスを判断基準としてる。結果は以下の通り。

時間帯

パス出し手 (ゾーン) → パス受け手 (ゾーン)

前半

宮原   (2) → 奈良崎  (4)
奈良崎 (3) →  高地   (1)
高林   (3) → 高地   (1)
高林   (1) → 宮原   (4)
高林   (2) → 奈良崎  (4)
高林  
(1) → 奈良崎  (4)
八田   (1) → 奈良崎  (4)
奈良崎 (4) → 義希      (2)   合計8回

後半

高林   (4) → 鈴木        (1)
高林   (1) → 義希    (4)
八田   (2) → 奈良崎  (4)
新居   (2) → 奈良崎  (4)   合計4回

後半は仙台が攻めて来たため(と言っても恐怖を感じない攻めだったが)攻撃に転じる回数が少なかったので回数は減ったが、それでも1試合で12回のサイドチェンジというのは比較対象がないのが残念だがおそらく平均よりも多い回数だろう。

出し手の方を注目してみるとやはり高林が一番多かった。同じボランチである飯尾のサイドチェンジが一度もないことを考えると、ダブルボランチとしての縦の関係が明確になっていたことが殊更に理解できる。監督の指示として守備のカバーリングは飯尾、展開や攻撃参加は高林がまかされていたのだろうが、忠実に戦術をこなす能力もまた選手として重要なファクターである。

さて、受け手の方だが筆者的には多少驚いてしまった。受け手は奈良崎がダントツに目立っていたのである。右に左にということを想定していたのでここまで高地と奈良崎に差が出るとは思っていなかった。スペースを見つけて飛び出す速さは高地よりも奈良崎の方が優れているためにこういう結果が出るのはもしかしたら必然だったのかもしれない。

サイドチェンジは諸刃の剣である。ボールが途中でカットされたら相手にとっては絶好のカウンターのチャンスになってしまう。筆者の記憶でサイドチェンジのカットからの素晴らしい得点は2002年J2開幕戦福岡VS大分の試合。藤崎の中途半端なサイドチェンジをファビーニョが奪って最後はアンドラジーニャが決めたのだが、この速攻は非常に鮮やかであった。移動距離が長いパスは当然のことながら相手がカットできる可能性も高まるために正確でスピードのあるボールを蹴る必要がある。この試合での鳥栖のサイドチェンジはほとんどのパスがきれいに通っていた。それだけパスが正確というのもあるだろうが、仙台のディフェンスのバランスがボールサイドによりすぎていたという事も言えるだろう。

◆ 試合開始当初

試合開始当初、前半10分くらいまでは仙台の方が攻勢にでていた。ダイアモンド型の仙台に対してボックス型のサガン鳥栖。仙台の両翼の2人がスピードのある選手のために慎重な戦い方で入ったというのもあったかもしれないが、サイドで相対する宮原と義希が梁勇基と清水に引っ張られてやや引きすぎた感があった。また以前見たときよりもシュウェンクの体にキレあり、前線でのランニングも随所に行われていて調子を上げてきてるというのを感じた。

こういう状態であったため、間延びしていたとまでは言わないが決してコンパクトではなかったサガン鳥栖の中盤に対してディフェンスラインでのボールにも積極的プレスをかける仙台。早いプレスに苦しみなかなか攻撃に転じることができなかったがここで松本監督がいつもの大きな声で選手に指示を送る。

 
 松本監督 「下がりすぎるな!もっと上げろ!」

 松本監督 「八田!パスはひとつ飛ばせ!」 

監督も中盤が下がっていたのが気になったのであろう。上げろというのは単純にして明快な指示である。実際はその指示どおりに動けるのは至極難しいのだが(笑)

もうひとつの指示であるパスをバックラインでのパス回しで、短いパスを繰り返していくうちにだしどころがなくなってあやうくプレスでボールを失いかける場面があった。当初の指示であった横方向のサイドチェンジというのもあるだろうが、長い縦のボールを出してパスが通らなくてもよいので前から奪いに来ている仙台のラインを引きさせるという目的があったのだろう。この指示のあとにサガン鳥栖も徐々に攻撃に転じることができ、そして高林の素晴らしい先制点につながる。

◆ 湘南戦でよくみた光景

宮原センタリング

湘南戦では白井が退場したために一人多かったものの無得点で終わってしまった。この試合で言われていたのが一対一で勝負をしかけることができなかったことと、単純に浅いところからクロスをあげてしまった事が得点できないことの要因に挙げられた。図は後半のシーンだが、右サイドで奈良崎がフリーでいるにも関わらず浅いところから宮原がクロスをあげている。ゴール前には仙台DFが構えていためにボールが渡らない。高さという点では師匠と新居はどうしても劣ってしまうために単純なクロスボールでは競り勝てない。京都戦で上げた2点目と3点目はいずれも深い位置からのグラウンダーのクロスから得点が生まれている。結果論かもしれないがここは奈良崎にボールを渡してほしかった。思わず湘南戦での光景が頭にフィードバックされたので取り上げてみた。

◆この試合の一番のシーン

サイドでのプレスのシーン

後半26分のプレスのシーン。ビデオを撮っている方はサイドにいた根引から財前へ縦のパスが入ったときの鳥栖のプレスを見てほしい。義希、飯尾、高地が素晴らしいプレッシャーでボールを奪いそしてすぐに前線へ上がって攻撃へ絡んでいく。このシーンを見て今後のサガン鳥栖に対して更なる希望を持てた。プレッシャーをかける位置、そして全体としてのボールを奪うことに対する意思の統一。奪ってから攻撃までの一連の流れがこの試合での一番のシーンだと個人的には感じる。

◆選手雑感

目に付いた選手の雑感を。

★鈴木師匠
相変わらずの守備っぷり(笑)特に後半27分にゴール前のロビングをあげられるのを遠い位置からスライディングで防いだのはかなりしびれた。運動量をもっともっと増やしていき京都戦のように得点にもからんでいただきたい。

★荒井
見事な前線での起点。労をおしまないランニングと正確なトラップ。終了間際のイエローカードは新居は決して悪くない。これからもレギュラーとして活躍していくには十分すぎるパフォーマンスを示してくれた。

★一柳
難しいタイミングでの出場だったが無難にこなしてくれた。松本監督が一柳に対して懸念しているボールを奪ってからの前線へのフィードでややミスがあったが
井手口の怪我を十分に補ってくれる活躍をしてくれたと思う。

★飯尾
今期初めて得点のにおいを感じる攻め上がりをみせたが、師匠からのパスが乱れて残念無念。本職の守備のほうでは目立たないながらも地味にこなしていた。井手口が外にでていたときもセンターバックとして無難な対処。試合毎にうまくなっている印象を受けた。