Jリーグ Division2 2005シーズン

  第28節 サガン鳥栖 1 - 2 湘南ベルマーレ

2005/8/30

徳島戦で先制点を挙げながらも痛恨の逆転負けでなかなか波に乗れないサガン鳥栖。第3クールはホームで調子がいいだけに、そして湘南は今期アウェーでかなりの苦戦を強いられているだけにどうしても勝ち点3が欲しかったサガン鳥栖。だがしかし…。上位を伺う上でのメンタル面の充実という意味でも、3位争いへの生き残りをかけてという意味としても非常に厳しくなる敗北を喫してしまった。

◆ 完璧なる崩しを求めて

まず、筆者がこの試合で思ったことは完璧なる崩しを求めすぎてないかっただろうかということ。スペースを探してボールをまわす、そして縦に入れる。FWがキープできればサイドに展開する。ここまでの展開には申し分ない。だがしかし…フィニッシュまでいかない。

フィニッシュに至るまでには様々な過程がある。ミドルの位置から早めに狙うのもいいだろう。サイドに展開してそれからのクロスにあわせるのもまたいい。縦へのスルーパスにFWが反応するシーンもまたよし。だが、それらすべてに共通するのはバイタルエリアを如何に活用するかということ。バイタルエリアからのシュート、もしくはバイタルエリアでのキープがなければ得点に結びつかせるのは至極難しい。バイタルエリアで何を狙わないといけないかというのはまずは如何にシュートの体制に持っていくか。今回の試合はその工夫に欠けていたのではないか。

確かにボールはよく回っていたと思う。スペースを見つけて走り出すサイドハーフ、ドリブルをしかけるサイドバック、運動量を重ねながらフリーになった選手に対してボールを回す。セカンドボールを拾うこともできたし、全体において完璧にやられたという印象はまったくない。しかし、試合が終わってしまえば結果的にバイタルエリアでの強引なプレーがない事が決定的シーンを迎えられない事の起因となってしまっていた。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2005/28節 サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ)』より引用

3枚の図、すべてにおいて同じ文言を用いてみた。これらは決して宮原への批判ではなく、期待の裏返しだと考えて頂きたい。このようにペナルティエリア内においての選択肢が極めてパスに限定されている。ドリブルをしかける、もしくは中央へのパスを狙うというプレーが少ないように感じた。サイドはもちろん崩しにおいて貴重な手段となるが、サイドを崩したりゴールエリア深くまで崩すことは決して目的ではない。最終的にはシュートへ至るまでのあくまで手段に過ぎないのである。これらの図で例えばスルーパスが通ってからあの位置でボールを受けたとしてシュートへつながるだろうか。いや、この角度からのシュートで決まった記憶があるのはフランスワールドカップ予選、イラン戦の中山のシュートくらいであって決してこの位置からのシュートは入らない。再度折り返して中央からのシュートが必要になってくるわけで、宮原がパスを出した位置からもう一度折り返して決めるという手数をかける事の成功率がどのくらいあろうだろうか。

結果論に過ぎないかもしれないが、これらのパスはすべて失敗に終わっている。同じ失敗になるのならばゴールへ向かうチャレンジ、例えばシュート、例えば中央のシュートを打てる選手への折り返しにおいての失敗を見たいというのは贅沢な要求なのだろうか。

◆ 一瞬の隙を見つけるパスセンス

この試合で何度も天を見上げた瞬間がある。それはボランチやディフェンスラインの位置からバイタルエリアでの動きでDFのマークを振りほどきフリーのタイミングを作ったFWへパスコースが空いているにもかかわらず、安全なサイドへの展開、もしくはバックパスに逃げたこと。バイタルエリアへのパスコースが出来た時に見逃さないプレーが得点力に即つながる。ビデオにシーンが写っていないので図で表したが、新居が素晴らしい動きでフリーでもらえるポジショニングを何度も取っていたがボールをもらえない事に対して何度苛立っていたことか。その苛立ちは大いに理解できる。自らの動きが生かされない事に対する悔しさがこれからのプレーに影響しなければいいが。逆に言えばそこで腐ってしまっては選手として大勢できないので頑張って欲しい。

前半はFWの鈴木師匠がボールを受けてタメを作り、右サイドへと展開する攻撃がかなりよかったと思うのだが、アルレイに代わってそのパターンがめっきりなくなってしまった。監督はアルレイを育てたいのだろうが、現在の実力から行くと間違いなく新居、鈴木の方が実践では効果的。過言かもしれないが、誰を育てるか、誰を起用して勝ち点を拾うことができるかによってこれからの鳥栖の将来がかかっている。

◆ シングルボランチ?ダブルボランチ?

現在の鳥栖はシングルボランチを引いている。簡潔に筆者の考えだけ言いたい。現在の鳥栖にシングルボランチをこなせるだけの選手はいない。シングルボランチとは、守備へのカバーリング、豊富な運動量、的確なパスの展開、肝をついたプレス。そしてそれらをすべてこなす広いプレーエリア。これらの動きをすべてこなすことによってはじめてそのポジションを1人でまかすことができる。

そのような人材はJ1でも欲しいくらいであって、サガン鳥栖の選手には申し訳ないが見当たらない。シングルボランチができるのはFC東京の今野、柏の明神、全盛期であれば、横浜FCの山口、そして引退した元広島の森保。また、守備という観点からいくと福岡のホベルトは際立って優秀である。これくらいのレベルにならないとなかなか1人で担当するのは難しい。

では、どうすればいいのかというと単純ではあるが、これらの動きを2人で分担しながら行えるダブルボランチにしたらいいのではないか。ここの所繰り返し言っているが、相手の得点を0に抑えれば勝ち点1は最低でも得ることができる。今以上に、更に守備に重きを置いて失点を減らすことが先決ではないか。

現在の守備陣系では前線のプレスにおいてダイアモンドにすることによる利益を得ていないように思える。サイドに追い込み、ボールに囲みをかけたときに、その間において相手のトップ下、もしくはシャドーストライカーの動き出しに対して、明確にマークにつけていない。ボランチがポジションを守るのか、マークにつくのかの明確な動きができていないために(判断が1人の力にまかされているために)不意にフリーの選手を生み出してしまう。前からのプレスが更に強化されてディフェンスラインを上げることが可能であれば機能するかもしれないが、ディフェンスラインのコントロールができないために押し上げがかなっていない。現に能動的なオフサイドを取るという戦術は現在のサガン鳥栖は取っていない。

もしかしたら松本監督はこちらの想像を超える何かを考えているのかもしれない。筆者の考えは結果的に守ってからのカウンターを増長するような形になってしまうので、いつまでたってもリアクションサッカーの域から脱出できない原因となりえる。だが、筆者的にはこれまでの戦いっぷり、選手個々の能力、J2での中盤事情から鑑みてもどうしてもダブルボランチの方が安定しているように思えてしょうがない。選手が若いということがしばしば談話に載るが、それならばなおさら自信のためにも目先の勝ち点1にこだわってもいい頃かもしれないと思うが果たしてどうか。

◆ 守備について

今回はビジュ、加藤という急増センターバックコンビにしては高さのある柿本と未知数のカシアーノに対して仕事をさせなかった印象はある。しかし、ひとつだけ不満を言うならば、それほど運動量を誇らなかった2トップに対して簡単にロングボールを通されてしまったシーン。このセンターバックにラインコントロールをしろというのが無理な注文であるかもしれないが、単純な動きである2トップに長いボールを入れられる事は反省の材料だろう。

湘南のカシアーノに関しては特筆して長所があるようには思えなかった。一瞬の動きはあったが、運動量があるわけでもなく組み立てに参加できるわけでもない。完全なストライカーとしてゴール前でのみ勝負するタイプであろう。

中盤の守備力に関してだが、義希の出場停止に伴って長谷川がそのポジションに入ったが、守備面に関してはなかなかどうして肝をついた守備を行っていたと思う。スピードがあるので危険な位置を感じたらそのダッシュ力によってカバーリングして1対1に競り勝ってボールを奪う守備が何度か見られた。まあ、組織的なプレスという意味とは少し違うが。運動量に関しては申し分ないので後は攻撃の時にいかに絡むことができるか。この試合ではゴール前で顔を見せてくれた事が皆無に等しいので攻撃でも肝をついた上がりとポジショニングをみせてくれれば義希と共に看板選手に十分なりえる素質はある。逆に言えばこの試合での義希の出場停止はかなり痛かった。

最後に、比べてはいけないのだろうが、前半16分の鳥栖のフリーキックと後半開始直後に決められた佐藤のフリーキックの位置はほぼ同じ位置。決定力というものは止まったボールにもでてくるものだということをしみじみと感じてしまった。

九州ダービーに向けて一抹の不安を受けながら事になるが、この試合だけは、普段はあまり使いたくない精神論という言葉を用いたい。

死ぬ気で戦い、そして勝て!

その一言につきる。その前にまずは明日の甲府戦。吉報を期待したい。