Jリーグ Division2 2006シーズン

  第1節 サガン鳥栖 0 - 1 コンサドーレ札幌

2006/3/9

ついにやってきた2006年シーズンJ2開幕戦。毎年、毎年この日が来るのを首を長くして待っているのだが、今年はトップリーグを意識した戦いができると思うと尚更の事開幕戦が来るのが待ち遠しかった。久しぶりに再会する友人達と共にまた1年間同じ気持ちを持ってサガン鳥栖を応援できることが出来ることも非常にうれしく思う。それと同時にすべてサガンドリームスにおんぶにだっこになるのではなく、我々サポータも厳しくも暖かい目でチームを支えていきたい。その待ちに待った開幕戦であったが残念ながら苦杯をなめてしまった。しかしながら、この敗北が明日への糧となることは間違いないだろう。

◆ 強烈な武器を得た制空権争い

今年の戦いにおける補強の目玉はもちろん韓国人選手であろう。特にキンユジンとユンジョンファンは開幕スタメンに名前をつらねており、今後の核となるべき選手であるのでその仕上がり具合が気になっていた。

キンユジンは初めて見たガンバ大阪との練習試合では自らのクリアミスから失点を許すなどと精彩を欠いた動きであった。その後のアビスパ福岡サテライトとの練習試合では少しずつ体もできてきたのかなかなかの動きを見せた。そして迎えた開幕戦。その動きはさすがというべきであろうか。しっかりと開幕に向けて体作りを間に合わせ、1対1の場面でもガンバ大阪戦のようにスピードに負けて簡単に交わされることなく、粘りの守備で幾度となくボールを奪いとっていた。守備という自らの仕事を忠実にこなす大黒柱として十分すぎるほどの活躍を見せたと思う。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/1節 サガン鳥栖 VS コンサドーレ札幌)』より引用

その中でも特に大きかったと思われるのは制空権争い。身長があること以上にヘディングのセンスを見ることができたのは落下地点の予測の正確さと早さ。常に相手よりも早く落下地点に入り、そして高い身長を生かして相手のロングボールのほとんどを跳ね返していた。ジャンプのタイミングも抜群であり、ロングボールに対する彼の守備力には大いに驚かされた。背が多少低い選手でも落下地点に先に入ってうまく体を使えば競り勝てるのがヘディングであるが、ユジンのように落下地点に正確に入ってなおかつ上背があるというのは相手にとってはお手上げ状態になるであろう。これでかつてのサガン鳥栖のように簡単にロングボールで崩されるシーンがかなり減ると思うとうれしくてしょうがない。ロングボールというと増川に川島にマルコスに嫌な思い出ばかりが脳裏をよぎるのだが(笑)

上背がなくてヘディングが得意と言えば、かつて鹿島アントラーズで大活躍した長谷川祥之を思い出してしまった。彼は170cm後半くらいの身長であったが、落下地点の読みと類稀なる跳躍力でヘディングによるゴールを量産していた。ゴールを決めた後の力強いガッツポーズと素晴らしい笑顔は鹿島サポータを虜にしたに違いない。サガン鳥栖にも元鹿島アントラーズの長谷川や元浦和レッズの福田のようにゴールを決めた後に力強く喜びを共有できる選手が現れてほしいと思っている。

◆ プレッシングサッカー

前半特に感じたのだが、今年のサガン鳥栖は非常に高い位置でプレッシングを行っていた。そのプレッシングの一連の守備動作を図で現したい。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/1節 サガン鳥栖 VS コンサドーレ札幌)』より引用

この狭いスペースにサガン鳥栖の選手が何人出てきただろうか。このようにボールに対する寄せが早かったので組織力を駆使する札幌の中盤もなかなか苦労したであろう。図は中盤でのルーズボールの競り合いの中で札幌がボールを奪ったときに素早くプレスへ向かうプレーである。このシーンも常に3人の選手でボール保持者を囲い込みコースを限定していきながら最終的にはボールを奪っている。プレスに捕まってボールを奪われる前にサイドへ素早くパスをだしたフッキのプレーも見事であったが、衛藤が関にうまく体をつけてついて行ったことによってユジンがボールを奪うことができた。この位置でユジンが奪うことができるという事はディフェンスラインが適切な高さでコントロールされている証。高すぎると一発で抜けられる可能性もあるし、低すぎるとスペースを作ってしまってボールをつなげられてしまう。全体的にずるずると下がる場面も少なく飯尾とユジンのコンビネーションもなかなかのものであった。

このようなプレスが前半は随所に見られて実際にボールを奪うシーンも多かった。そこで奪ったボールをそのままシュートにつながる攻撃に結びつけばよかったのだが、焦りからかラストパスの精度にかけもったいないシーンも多かったので、ボールを奪ってからの攻撃が今後の課題であろう。

◆ 今野?明神?いやいや彼はキャプテン義希

筆者的にはこの試合の義希の動きに影のMVPを送りたい。昨年と違って中盤の中央でやや守備的な働きをこなしている義希だが、要所要所でボールを抑える動きで鳥栖の決定的なピンチを幾度となく防いでいた。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/1節 サガン鳥栖 VS コンサドーレ札幌)』より引用

図は2つのシーンを1つにまとめている。1つ目は高地のクロスからファーサイドで競ったユンのこぼれ球を拾ってからの札幌のカウンター。フッキが鳥栖から見て右サイドから左サイドの奥深いスペースへ素晴らしいサイドチェンジを行う。石井がボールを拾って義希と1対1の勝負。ここにしっかりとついてきた義希が交わされると1点ものであったと思うがしっかりとボールを奪ってこの後の攻撃へつなげる。

図にはないが、この後ボールを奪った義希はドリブルで前進しつつ新居に預け、自らは左サイドを疾走しながら上がっていった。新居の判断で右サイドへ展開したために義希の出番はなかったのだが、ボールを奪うと同時に攻撃へ転換する義希のスピードを生かせるのはめまぐるしくポジションを変化させる今年の中盤構成の賜物か。それぞれにある程度の役割はもっているものの、濱田、ユン、義希がお互いにカバーしつつ守備にも攻撃にも顔を出すセントラルハーフとしての活躍が大いに期待できる。また、アタッカーとしても開幕戦でまずまずの動きを見せた山城、交代出場で積極的な動きを見せた廣瀬、今年より一層の成長を見せて欲しい長谷川、そして小林、蒲原と楽しみな選手は続々と後ろに控えている。ユンや濱田が疲れたときにはその位置には山口や村主も後ろに控えているし、こう思うと選手層が増したなというイメージは確かにする。

2つ目のシーン(【4/7】以降)はコーナーフラッグ付近での義希の守備。巧みな切り替えしによって一度は交わされるものの反転するスピードが早く、そのまま体をつけてボールを奪い返した。深く切り裂かれてクロスを上がられたらこれも1点ものだっただけに義希のあきらめない粘りの守備はチームを助けた。

今年の義希はこのように守備の機会が増えるであろうが、昨年にもまして守備力が向上したように思える。入団初年度にボランチの位置に入ったときはいささか不安定なポジショニングであったために開幕前は多少不安であったが、この動きを見る限りではむしろボランチの方が適職だったのではないかという事さえ覚えてしまう。義希は攻め上がりも得意なだけにボールを奪って中盤から飛び出して行くシーンをたくさん見せてほしい。彼のポテンシャルならば明神や今野のようにディフェンスラインでボールを奪ったと思いきや、サイドのスペースへ走りこんでクロスによるアシストを決めることも決して不可能ではない。そこへのボールが引き出される可能性を感じるのも濱田やユンのパス能力の高い選手がいるからこそでもある。

◆ 要求に関しては開幕前と同じ

まずは松本監督のインタビューを抜粋。

 
 松本監督 「ゴール前でのチャンスを生かせず、負けたとはいえ次のゲームにプラスとなる要素が多い内容だった。我々はつなぐことが出来るチーム。今日の蹴る場面をもう少しつなげれば、ゲーム運びのレベルは上がる。」
 

そして、開幕前の練習試合で岸野コーチが出していた指示はこちら。

今思えばこの練習試合の時からボールを蹴らずにつないでいこうという指示がでている。中盤や前線でのボールポゼションを増して簡単にボールを失わない戦いを目指しているということか。そういった指示が出せるのも、もちろんボールを持つ事ができる選手が多数入ったからできることである。監督やコーチの要求に応えて中盤をクリエイティブに崩す試合が見ることができれば上位進出も間違いない。

◆ 全体的雑感

この試合を見て思ったのは、昨年にくらべてつまらないミスが減ったなということ。意図のないキックや、何でもない場面でのトラップミス。そういったシーンが減っていたのが印象に残った。ユン様の焦ったフリーキックに関しては見なかったことにしたい(笑)

守備に関しては非常によかったと思うのだが、攻撃に関してはまだまだ連携が取れていないなというのを感じた。監督も語っていらっしゃったが、ユンにボールを預けるまでの動きとボールを持ってからの動き、そこがこれからの戦いのポイントになると思う。ボールはまあまあ回っていたのだが、バイタルラインから前へと向けたシュートにつながる効果的なパスは少なかった。機会を伺いながらボールをまわしていたことがOptaポイントの上昇につながって図らずもサガン鳥栖の選手がベスト11に4人も選ばれてしまった(笑)

そういったバイタルライン付近のキラーパスはもっと前を向ける早い状態でユンにボールが回っていたら引き出せたのかもしれない。また、早い動き出しに関してはユンの時のみに限らず浜田や鈴木がサイドでボールを受けたときにも同じような印象を受けた。長いボールを受けて一旦は前を向くもののフォローが遅れたりして結局後ろへ戻すはめに。ここに誰か1人でもついてきてサイドをワンツーで抜ける事ができればチャンスの芽は格段に広がるに違いない。この試合でサイドでのワンツーリターンはほとんど見られなかったと思う。山城は抜ける動きはよかったものの、そういったボールサイドでの組み立てもこなすようになれば監督の信頼度も増してくるだろう。

後半は濱田がこういった状態で手詰まり感をぬぐえなかったためにアタッカーである廣瀬を投入してきたが、積極的な動きを見せて衛藤とのコンビで右サイドから何本かクロスがあがり新人選手でありながらもこの2人は非常によい働きをしたと思う。「取られた」と思ったようなボールでも簡単に失わずにクロスまで持って行った動きは立派。新人と言えば藤田に関してはプレー時間が短かったのだが、ヘディングでダイレクトに右サイドへ流すポストプレイを見せたりと練習試合の通り的確なポストプレイを見せていた。プレー時間が長ければもっと生きてくる選手だけにスタメンでのプレーもみたいところだ。

いずれにしても先制してからの札幌の守備はお見事。中盤でのパス回しはダイレクト、もしくはワンタッチで華麗に回る場面も見られたし今年も堅実なサッカーを展開してくる嫌な相手となりそうだ。

開幕戦は残念な結果に終わり、結果は結果として受け止めなければならないが札幌相手に手も足も出ない負け方では決してなかった。もちろん今後の試合に希望が持てる戦いであったし、次節の横浜FC相手にしっかりと勝つことは非常に重要である。次の試合では新居がしっかりと決めてくれる事だろう。相手は監督交代でごたごたしている最中であるのでこの隙に乗じてしっかりと勝ち点3を奪い取っていただきたい。