Jリーグ Division2 2006シーズン

  第15節 サガン鳥栖 2 - 2 柏レイソル

2005/5/28

徳島、神戸とスコアレスドローが続いてホームへと帰ってきたサガン鳥栖。迎え撃つべくは個人技、組織、すべてにおいてJ2では抜けている存在とも言える柏レイソル。サガン鳥栖としては柏の猛攻を如何にして防いでいくかという展望だったのだが、前半に2失点。そしてユジン退場によって一人少ないというディスアドバンテージ。誰もがこの試合の完敗を感じつつあったが、最後まであきらめない選手、そしてサポータ達の気持ちがドラマを引き起こした試合となった。

◆ 柏と鳥栖の差は運動量の差

この試合、前半から柏がセットプレイとカウンターで2得点を挙げる展開となった。このような失点は、もちろん個人技の差があることが原因であることに関しては否めない。しかしながらむしろ得点が入らなかった部分において柏レイソルとの実力差を感じた。それは柏の選手達の惜しむことのない運動量、チーム全体としての連動性があまりにも鳥栖と差があった事。このチーム全体としての力が現在の柏の順位が決して間違いではないということを感じた。

この試合では鳥栖がなかなかディフェンスラインからの組み立てができなかった。それは柏のプレスの上手さとそして鳥栖の選手の運動量のなさ。この日に限っては前線がボールを引き出そうとする動きが待ったくできなかったように感じた。藤田と奈良崎のコンビが日が浅いというのもあるだろうが、ボールを引いて受けたいのか、裏へ出してほしいのかの注文も意図も見られずにただ淡々と来るボールに対して動く印象。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/15節 サガン鳥栖 VS 柏レイソル)』より引用

それではまず、柏のプレスを見ていただきたい。ディフェンスラインでまわし始めた鳥栖であるが、右サイドから左サイドへと展開。このとき画面のは鳥栖側のハーフコートを映しているが、既に柏の選手の数が多い。テレビ画面で見ると良くわかるが、左サイドにボールが入った瞬間、柏の右サイドの最前線の選手がボールが回ってきた高地に対してプレスを行うと同時に、その後ろにいた柏の選手も前へとスタートし、完全にマークの受け渡しが成功。

そのときに高地は右からやってくる選手が気になるためにパスコースは前しかない。高地に取っては前の選手はあいているように見えていたのだろうが、ボールが入ってくる前に動いていた柏の選手の方が出足が鋭く、あっという間に3人で囲ってボールを奪ってしまう。前線の選手とサイドの選手の連携が非常にとれているプレスで、中盤が薄い鳥栖としてはなすべき手段がないような形でボールを奪われている。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/15節 サガン鳥栖 VS 柏レイソル)』より引用

次は筆者が現在のサガン鳥栖に対して一番懸念している状況。ディフェンスラインでボールをまわしつつある状態で前を向いてもそこにつなげる選手がいないので、どうしても長いボールが多くなってしまう。つなげるサッカーを目指しているというが、筆者には最近のサガン鳥栖は逆にロングボールが多くなったサッカーという形にしか目に映らない。特にユンジョンファンが早めに長い一発を狙うのでどうしても前線が前へ、前へと行ってしまうのが目に映る。

1/3と2/3の画像は左サイドから展開してきた状態。相手のプレスが早いので早めにボールを前へとまわしたいのだが、柏レイソル全体の運動量が豊富であり、そしてサガン鳥栖全体の運動量が乏しいためにどうしてもパスをする相手が近くにおらず、柏の選手ばかりが目の前に映る状況となっている。このパスもまるで前線にくさびをいれるかのような長いボールであるが、実はただの中盤でのつなぎのパス。この長い距離であったら柏の選手の方が出足鋭くカットされてしまうのは明白である。

3/3の画像は飯尾がペナルティエリア内でボールを持っているのだが、何とハーフコートを見回しても誰一人としてパスをする選手がいない。FWは2人とも動きがなく前線でロングボールを待ち構えているのだが、彼らはこのような状況で長いボールを受けてキープできるような選手であるのだろうか?それとも、この距離でありながら飯尾からDFラインの裏へ絶妙なボールがでると思っているのだろうか?少々辛辣ではあるが、あまりにも動きがない前線、そして中盤の選手へのこの試合で得点と取るための動きに対する意図が聞きたいような瞬間であった。

柏はディエゴがフォワード登録であったのが、引いてきてボールを受け、そしてリカルジーニョや矢澤を生かす素晴らしいプレーを見せていた。もちろん、山根の運動量や平山の上下動もディエゴのいいところを引き出していたし、こういったチーム全体としての運動量が前半の圧倒的差を生み出していたと思う。サガン鳥栖としては個人技に劣る選手達が、運動量でも劣っていたら絶対に勝ち目はない。

◆ J2では反則級のディエゴ

ここからはみなさんも目の当たりにしたであろう、ディエゴの素晴らしいプレーっぷりをまとめてみた。SAgAN Report ならぬRaysol Report みたいになってしまったのだが(笑)

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/15節 サガン鳥栖 VS 柏レイソル)』より引用

まずは鳥栖の2失点目のシーン。高地の素晴らしいミドルシュートから得た鳥栖のコーナーキックではあったが、残念ながらカウンターで失点した場面である。

リカルジーニョからディエゴへボールがでて、ユンとディエゴのマッチアップとなる。ユンは先に相手のコースへと入るが、ディエゴが素早い動きで体を入れ替えてユンをあっさりと交わす。この状態で右サイドに平山がいたので2対1となるが、普通のブラジル人だったら自らで決めたいという(良い意味での)エゴによって縦へ突破してシュートというのが常であるが、彼は違った。左サイドへ行くと見せかけて顔を左へ向けたまま右サイドの平山へ絶妙のノールックパス。平山は難なくこれを決めるが、ディエゴは自らが得点を狙って80%の成功率で終わらせるのではなく、DFをひきつけて平山へパスを行うという柏というチームが95%得点が取れる方法を選んだのだ。このシーンだけでも彼のチームに対するフィット感が伺える。平山が決めた後にディエゴが行った右手のガッツポーズなんて憎いばかりのかっこよさだった。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/15節 サガン鳥栖 VS 柏レイソル)』より引用

図は、ペナルティアーク前でボールを受けたディエゴ。この前のプレーで同じような位置からミドルシュートを放っているのでディフェンス陣はシュートコースに入ろうとするが、交わされるのも怖いのでなかなか飛び込めない。回りから鳥栖の選手が何人も集まってくるが、結局ボールが奪えずにリカルジーニョから右サイドの山根へとつながれて山根は楽な状態でミドルシュートを放った。ここまでひきつけられると左サイドの平山もフリーであったし、シュートを打った山根のように3列目からの飛び込みも可能になる。柏としては、個人技のあるディエゴ、リカルジーニョ、そして谷澤がボールを持てることができるので非常に質の高い攻撃ができる。

※ 図は『SKY PerfecTV! (2006/15節 サガン鳥栖 VS 柏レイソル)』より引用

ディエゴ特集のクライマックスであるが、絶妙なラストパスのシーン。1枚目は鳥栖がボールを失うシーンである。載せる必要もなかったかもしれないが、鳥栖の選手を5方向で柏の選手が囲むというあまりに上出来なプレスのシーンであったために思わず乗せてしまった。

その後の2枚目の図はこのプレスによってボールを奪った柏であるが、ディエゴへとボールが渡ったところ。飯尾が前に出てきてディエゴのマークにつくが、飯尾は自らが出てきたことによってできてしまう背後のスペースをケアするように自ら指示を出している。ここで李が豊喜の背後から飯尾を引き出したことによって作ったスペースへダイアゴナルランを開始する。豊喜は中央のディエゴに目を奪われ、背後から走り出しを開始した李の動きについていけずに一歩出遅れてしまう。この辺りが急造サイドバックの弱点というべきか。他の試合でも豊喜のマークミスを指摘したが、致命傷になる前に早めのレベルアップを期待したいところだ。

ここで李の走り出しを見たディエゴが選んだ選択はチップキックによるスルーパス。さしずめ、L1ボタン+▲ボタンというところであろうか(笑)このパスが非常に見事。李がオフサイドになることがない早めの選択であり、なおかつユジンの頭を超えて李のスピードが止まることのないように足元へぴたり。非常にレベルの高いラストパスというものを見せてもらった。

鳥栖にとって惜しむらくは飯尾が気づいて全員に指示をだしているにも関わらずに、そのスペースをまんまと使われてしまったこと。ここ数試合無失点ではあったものの、致命的ピンチで相手のシュートが入らなかったという運のよさも多かった。ここで全体の守備、特に飯尾以外の選手がカバーリング能力を高めないといとも簡単にスペースを使われてしまう結果となってしまう。

◆ 試合総括

この試合で鳥栖に勝ち目はないと思っていたが最後に頑張って追いついた。後半に追いつく前の鳥栖は、ボールをキープしようとする柏へプレスも早くなったし、運動量も高まっていた。後半開始直後はどちらかというと守備重視で発信し、最後の15分前から高地を高めの位置へ上げて攻撃モードへと変化していたので首脳陣としてはしてやったりの作戦だったであろう。

しかしながら、FW陣に関してはこの後半終了前15分のようなキーパーに全力で当たっていくプレーや、執拗に裏を狙っていく動きを前半からしていけば、柏に簡単につながれることもなかったし展開はもっと違っていたかもしれない。FWの選手達はリザーブ陣を見てもFWの選手は疲れてしまったら交代枠は2人ともしっかりと準備されているのである。前線から相手へのプレス。そして攻撃時にはボールを引き出す動き、こういった動きが試合開始当初から少なかったのが非常に残念であった。

柏としては2点リードで迎えてしかも相手は1人少ないという状況で決して油断したわけではないのだろうが、少しギアを落として試合全体を落ちつかせようとしていた。そんな中でも決めるシーンはあったのだが決め切れなかった事がこの鳥栖の同点劇を生んだのであろう。鳥栖が1点差にせまったときでも柏のスイッチがはいらなかったのが気になった。もしかしたら体力的に前半飛ばしすぎていたのだろうか?

いずれにしても、ディエゴ、谷澤のテクニックとキープ力のある2人がコーナーフラッグ付近でキープを始めたときは試合が終わってしまったと思ったが、サッカーというのは付くづく分からないものである。

さて、この試合に限っては終わりよければすべてよしではあったが、前半の差が今の柏と鳥栖の差であることを感じた。これから上位陣と当たるに際して不安だけが残る試合であった。